ずっと前から読もうと心に決めていた一冊でした。 以前読んだ『流浪の月』で、言葉にならないほどの衝撃と感動をもらってから、凪良ゆうさんの描く世界には絶大な信頼を寄せていたからです。
先にこれだけは言わせてください。 もしこれからこの本を手に取るなら、絶対に「家の中」で読んでください。 私は通勤電車の中で読み終えてしまい、溢れそうになる涙を堪えるのに必死で、猛烈に後悔しました。それほどまでに、魂を激しく揺さぶられ、涙が止まらなくなる大傑作です。
青春小説の枠組みを、軽々と超えていく深み
物語の始まりは、瀬戸内の美しい島。 ともに心に孤独を抱えた高校生の櫂(かい)と暁海(あきみ)が出会い、惹かれ合うところから始まります。
最初は「切ない青春小説なのかな」と思って読み進めていたのですが、物語は二人のその後の人生の分岐点を、容赦ないリアリティとともに描き出していきます。 途中で、主人公である櫂に対して「この野郎……!」ともどかしさや怒りを覚える瞬間もあるのですが、それすらもすべて、後半で物語の深みに観客を突き落とすための、緻密な計算(表現)だったのだと後から気づかされました。
近すぎてすれ違う、二人の価値観
似たような境遇で育ち、心の奥底では誰よりも強く繋がっている二人。 しかし、お互いに「本当に思っていること」を口に出せない関係が、何年も、何年も続いていきます。
同じ境遇だからこそ痛いほど分かり合える部分と、育った環境の違いからどうしても理解し合えない部分。年齢を重ね、人生の荒波に揉まれるごとに、お互いの価値観は固まり、環境はより複雑に絡み合っていきます。
「もう、どうしようもないのか」と、見ているこちらが息苦しくなるほどのすれ違いの果て、最後に待ち受ける結末には、言葉を失いました。ここまで読者を泣かせてくれるのかと、ただただ圧倒されるばかりです。
まとめ
「思っていることは、言葉にしないと伝わらない」 そんな当たり前で、だけど世界で一番難しいもどかしさが、この一冊にはぎゅっと詰め込まれています。
切なくもどこまでも美しい、二人の生き様をぜひ見届けてください。繰り返しますが、ハンカチを握りしめて、お部屋で一人で読むことを強くお勧めします。
おすすめ度:★★★★★(5.0) ※文句なしの満点。心に一生残り続ける、大切な一本になりました。

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