最近、私はどっぷりとミステリーの沼にハマっています。 ただ、これまでは「凄惨な殺人事件が起き、犯人をロジックで追い詰める」といった、冷徹な作品ばかりを読んできました。
そんな中で出会った本作『アリアドネの声』は、私に新しいミステリーの扉を開いてくれました。極限状態の謎解きを描く「サバイバルミステリー」でありながら、その本質は、傷ついた心が光を取り戻す圧倒的なヒューマンドラマだったのです。
過去の亡霊に、自ら囚われにいく苦しみ
主人公は、過去に起きた兄の死という重い十字架を背負って生きています。 兄が遺した「口癖」の通りに生きようとするあまり、彼は自ら苦しい生活へと足を踏み入れ、そこから抜け出せなくなってしまっているのです。
誰かのため、あるいは過去の義務感のために自分を犠牲にして生きる姿は、読んでいて胸が締め付けられます。しかし、そんな彼を皮肉にも現実へと引き戻したのは、突如発生した大地震という未曾有の災害でした。
謎を解くことが、生きる力に変わる
崩落した凄惨な状況の中で、主人公は次々と立ちふさがる「地震がもたらした謎」に挑むことになります。
これまでのミステリーで味わってきた謎解きは、犯人を暴くための「暴き、終わらせるためのロジック」でした。しかし、本作のサバイバル環境における謎解きは全く違います。 困難を乗り越え、謎を一つずつ解き明かしていくプロセスそのものが、主人公が兄の死と改めて向き合い、自分の人生をリスタートさせるためのステップになっていくのです。
そして、すべての謎が繋がった最後に待ち受ける結末は、私たち読者にも「明日を生きるためのエネルギー」を分けてくれます。
まとめ
人が死ぬ恐怖を描くミステリーではなく、極限状態から「人が生還する強さ」を描いた本作。
今、何かに囚われて息苦しさを感じている人や、一歩を踏み出す元気がほしい人に、ぜひ手に取ってほしい作品です。読み終えたあと、地下の暗闇から這い上がったときのような、澄み切った青空が見えるはずです。
おすすめ度:★★★★☆(4.0)

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