「電車で読んでいて、数ページ読み飛ばしたかと思った」 そんな衝撃を味わったのは久しぶりでした。
今回ご紹介するのは、王谷晶さんの『ババヤガの夜』。
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暴力と喧嘩を唯一の趣味とする最強の女性・新道依子が、男社会のヤクザ組織を舞台に暴れまわるバイオレンスアクション小説です。
漫画的な爽快感と、仕掛けられた罠
本書の魅力は、何といってもその圧倒的な「読みやすさ」にあります。 アクション描写が非常に漫画的で躍動感に溢れており、普段あまり小説を読まない方でもスルスルと入り込めるはず。200ページ弱というボリューム感も、一気読みに最適です。
しかし、ただのアクション小説だと思って油断してはいけません。 中盤から後半にかけて、物語の重厚感を一気に底上げする「叙述トリック」が牙を剥きます。あまりの鮮やかな反転に、私は「寝ぼけて読み飛ばしたかな?」とページを戻したほど。このどんでん返しが、物語に深い意味を与えています。
ヤクザ社会に描かれる「自分らしさ」の対比
物語を支えるのは、対照的な二人の女性です。 圧倒的な武力で自分を貫く依子と、組織の重圧の中で自分のやりたいことができない尚子。
男社会であるヤクザの世界において、自分であり続けることがどれほど困難で、どれほど重い覚悟を要するか。二人の対比を通じて、「自分を殺して生きること」の苦しみと、「自分を貫くこと」の壮絶さが浮き彫りになります。
SNS時代の私たちに突き刺さるメッセージ
この「自分を貫く」というテーマは、現代を生きる私たちにも深く突き刺さります。
SNSを開けば、常に誰かの成功や「正解らしきもの」が流れてくる現代。 私たちが「やりたい」と思っていることは、本当に自分の意志でしょうか? それとも、サブリミナル的に刷り込まれた「みんなの正解」でしょうか?
情報の渦に流され、自分らしさを見失い、諦めることに慣れてしまった私たち。 本書は、極道という極限の社会を借りて、「本当の自分で生きるための覚悟の重さ」を問いかけてきます。
まとめ
アクションの爽快感、ミステリの衝撃、そして哲学的な問いかけ。 それらが192ページに凝縮された、まさに「今」読むべき傑作です。
自分自身を見失いそうになっているすべての人に、依子の拳が届くことを願っています。
おすすめ度:★★★★☆(4.0)
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