「大義名分」に殺されないために。――『同志少女よ、敵を撃て』が現代の私たちに問いかけること

小説

今回ご紹介するのは、アガサ・クリスティー賞を全選考委員が満点で選出した傑作、

『同志少女よ、敵を撃て』です。

同志少女よ、敵を撃て (ハヤカワ文庫JA) [ 逢坂 冬馬 ]価格:1210円
(2026/1/17 23:10時点)
感想(6件)

第二次世界大戦、独ソ戦の最中。女性狙撃兵となった少女セラフィマの物語を通じて、私が最も強く感じたのは、「大義名分に乗っかった目的の先には、虚無しか残らない」ということです。

「人を殺す自分」を正当化する危うさ

戦争という、人を殺すことが日常になるいびつな世界。 そこでは、人間が正気を保つために「自分を正当化する何か」が必要になります。

「敵兵を殺して、自国民を守る」「家族の仇を討つ」 本当は殺したくなどないはずなのに、いつしか殺した人数を誇り、より多く殺すことを目標とするようになってしまう。

しかし、その「大義名分」に基づいた目標には、本当の意味での救いはありません。 目標を達成しても、戦争が終わっても、死んだ仲間は戻ってこない。そこにあるのは、自分が正当化していたものが無価値になる「ただの虚しさ」だけなのです。

「自分だけの言葉」で目的を再定義する

だからこそ、本書では「自分だけの目標」を持つことの重要性が説かれています。

誰かが作ったありきたりな言葉ではなく、たとえ同じ言葉であっても、そこに自分だけの真実の思いを乗せること。それが、戦争という地獄を、そして「その後」の人生を生きるための唯一の糧になるのです。

現代社会に潜む「大義名分」

このメッセージは、現代に生きる私たちにも鋭く突き刺さります。

  • 周りのみんなが受けるから、この大学を受験する
  • 世間の評価がいいから、有名な企業に就職する
  • 誰もが納得するような「ありきたりな言葉」で面接を乗り越える

私たちも誰かが考えた大義名分に乗っかって、自分の人生を歩んでいる「つもり」になってはいないでしょうか。 借り物の言葉で生きることは、後々自分を苦しめることになると、本書は教えてくれているような気がしました。

主人公・セラフィマのように、私たちも今一度「自分の本当の目的」を見つめ直す必要があるのではないでしょうか。

まとめ

本書は、当時の女性兵士の過酷な扱いを克明に描いた戦争小説ですが、それ以上に、現代を生きる私たちへの強いメッセージが込められた作品だと思います。

自分の人生を自分の手で取り戻したい。そう願うすべての方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

おすすめ度:★ ★ ★ ★ ✫(4.5)

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